ゴジラ(本田猪四郎監督/円谷英二特撮技術監督)
1954年3月1日、米国がおこなったマーシャル群島ビキニ環礁での水爆実験により
周辺海域とそこに棲む海中生物、そして推定2万人超の人間が被曝しました。
被害に遭った海域で操業していた数百隻の漁船のひとつに、日本のマグロ漁船、
第五福竜丸が在りました。第五福竜丸の船体と捕獲した魚、乗組員23名は
強い放射能に曝され、”死の灰”を浴びました。
8ヵ月後の1954年11月3日、東宝が公開した本作のオリジナルポスターには
「水爆大怪獣映画」とあります。
水爆実験によって、海中に眠っていた伝説の怪物「ゴジラ」が起こされ活動を始めます。
原因不明の海難事故、その現場近くにある大戸島の被害、それがゴジラの仕業だと
判った頃、ゴジラは東京に上陸し、街を踏み潰し、その口から放射能炎を吐き出して
全てを焼き尽くしていきます。
同じ頃、科学者・芹沢大助(平田昭彦)は、水中の生物が一瞬にして白骨化してしまう
水中酸素破壊剤、オキシジェンデストロイヤーを発明してしまいます。
ゴジラを倒す為にオキシジェンデストロイヤーを使うことを求められても、芹沢博士は
これが兵器の開発に使用されてしまうことを恐れ、強く拒むのですが…
「やったぞ、大成功だ!幸福に暮らせよ…!」
映画の公開から3年後の1957年8月、私の家族が長崎を訪れています。
1ヶ月ほどかけて九州を旅行し、最後に訪れたのが長崎なのですが、
その旅のアルバムには、長崎の写真だけがありません。
うなされるほど強烈な思い出になってしまったというその地は、敗戦から12年が経過しても
1旅行者の目には、戦時中に連れ戻されてしまったかと思うほどの有り様だったそうです。
瓦礫の中に、墓標の様にぽつん立っていたという一本足鳥居。
現在の長崎の美しい町並みも、戦火に包まれたその他の日本中の町の現在も、
生き残った人々が必死で立ち上がり、信じ祈った未来への希望が生み出した、
大切な宝物なのです。
廃墟とバラック小屋が国中にひしめいていた頃の日本で、
渾身の力を込めてつくりあげられた「ゴジラ」第1作。必見です。
【追記】
これを読んで下さった一部の方達から「怖そう」「恐怖映画やパニック映画の類?」
というメールをいただきました。観る人がどこに視点を置くかで違うと思いますが
私の場合は、悲しい映画だと感じています。人間の身勝手さがとても悲しく、怖い。
伊福部昭の手による誰もが知るあのテーマ曲も、そういった悲しさと怖さを
見事に表現した名曲だと思います。
私が最初に観たゴジラ映画は、第5作「三大怪獣 地球最大の決戦」という作品です。
ゴジラはこの第5作以降、人類の味方のような扱いになっていて、迫力はあっても
通じ合えない相手への恐怖や悲しさは感じさせず、ユーモラスでさえあるゴジラ像が
暫く続いていく事となります。
第1作を初めて観たのは17歳の時。それまで抱いていたゴジラへの愛が、全く
違う意味を持つものに激変しました。
今でも、観たことのある全怪獣映画の中で第5作が最も好きではありますが
多分それは、初めて触れた怪獣映画への思い入れからくるものでしょう。そして
明確なメッセージを突きつけてくる第1作は、特撮映画としても、ただの映画としても
大傑作だと思います。機会があったら是非みてね!
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GONIN(石井隆監督)
ギラギラ男たちのギラギラ映画「GONIN」。ギラギラ男たちのメンバー紹介からしましょう。
まず、大越組という暴力団の金庫を狙う無謀な連中は、以下の5人。
1.大越組に多額の借金をしているディスコ「Birds」のオーナー、万代樹木彦(佐藤浩市)
2.美しく装い、裕福なゲイを暴力的にゆするコールボーイ、三屋純一(本木雅弘)
3.汚職で逮捕された刑事崩れにしてぼったくりキャバレーの用心棒、氷頭要(根津甚八)
4.パンチドランカーの元ボクサーで大越組の下っ端組員、ジミー(椎名桔平)
5.リストラされて求職中のサラリーマン、荻原昌平(竹中直人)
この5人を追う連中は、以下の4人。
6.五誠会大越組組長、大越康正(永島敏行)
7.五誠会大越組若頭、久松茂(鶴見辰吾)
8.凄腕の殺し屋、京谷一郎(ビートたけし)
9.京谷の弟分、柴田一馬(木村一八)
以上9人が、石井隆作品ファンにはおなじみの、夜と雨と血の街で、
9人9様に、胃もたれするほどギラギラ輝きます。
とにかくすごいギラつき。でも、そこで描かれているのは、とことん「愛の話」。
いろんな形の愛。ゆがもうが、ねじくれようが、相手が死のうが、
大切な者への思いに拠って、人は生きられるんだなぁと思います。
石井隆監督で愛の話といえば、村木と名美の物語ですが、今回は2人とも出てきません。
その代わり、ナミィーという名のタイ人娼婦(横山めぐみ)が、性不能者でもあるジミーと
純愛を貫く女性として登場し、ファンの胸を切なく刺激します。
ギラギラしてるのは9人だけじゃないよ。映像全体ギラギラだし、ギラギラ男たちも
もっといっぱいでてきます。ほんのちょびっと出てきてほんのちょびっとしゃべるだけなのに
凄まじい気迫を撒き散らす五誠会会長の式根には、今は亡き名優・室田日出男。
ぼったくりキャバレーのマスターには、下卑た笑いでスクリーンをギトギトにしてくれる不破万作。
ひとつだけ残念なのは、劇場公開版で重要なシーンの数々をばっさり切り落としていること。
尺を詰める為に仕方なかったのかもしれませんが、劇場版ではこの映画を理解しきれません。
今からご覧になる方は、廃盤になっているLDの「GONIN
特別版」、または現在発売中のDVD
「GONIN コンプリートボックス」の中の「Disc3:GONIN REAL
EDITION」を是非どうぞ。
LDはあまりにも唐突なエンディングを迎え、「いやあああああ!」と叫べて楽しいよ。
DVDでは劇場版と同じ、余韻を残すエンディングに戻されています。どっちもおすすめ!
どっちもどうしても手に入らなかったら、うちに遊びに来てもいいよ! ミ*
゚Д゚ミ
フヒヒ
この映画、好きすぎちゃって、製作資料をいっぱいかき集めちゃいました。
あるシーンで登場する、新宿の高速バスターミナルなどは、思いがつのりすぎて
見学に行っちゃいました。映画に登場するのはセットですし、そっくりにつくられている訳でも
ないので、行ってもどうしようもないのは判っていたのですが、行ってしまいました。
その場面で命を落とす或る登場人物を思うと、今でも悲しくなります。
演じた役者さんはその後もますます大活躍中ですが、だめなところだらけの極めて人間的な
その役の人物が死ぬのが、今でもとても悲しいのです。
奪う→逃げる→追われる→戦うというだけの単純な話なのに、もう長いこと私は
この映画に心をとらわれたままになっています。
挿入歌「紅い花」は、夫と死別してから一切の活動を休止したままの
日本が誇る大歌手ちあきなおみの、現段階でのラストシングルです。
他にもまだまだ書きたいことあるけど、あんまり書くと飽きられちゃうから、あとはヒミツ。
「言った言わないやめてくれる?別れた女思い出すから!」
〜 おまけ
@〜
本作品を引っ提げて、ロカルノ国際映画祭に乗り込んだ石井隆監督。
地下鉄サリン事件が世界中を震撼させている真っ最中のことだったので、監督は記者達に
「日本人はみんな、サリンを撒いたり、こんな(映画の内容の様な)ひどいことを
したりする人たちばっかりなのか」と散々せめられ、涙目になって帰国。
竹中直人に「ぼくは行った意味がないですよ」とイジケ電話。可哀想すぎる。
〜 おまけ
A
〜
ディスコ「Birds」は、万代さんが昔ギタリストとして参加していたバンドの名前でもあります。
映画の中にほんの一瞬使われているそのバンド時代の写真を、浩市さんはとても気に入って
撮影中、ネガを借りてテレフォンカードをつくり、スタッフ全員に配ったそうです。
しかも写真の隅に「祝・日本レコード大賞 佐藤浩市」の文字まで印刷されている凝り様。
100枚だけ作ったという貴重なテレフォンカードに使われたのは、こんな写真ですよ。
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